記事について
記事の最後に、基本的にはまとめを付けています。
そこを読んでみて興味がある場合は上から読み進めてみてください。
ひととおりまとめあげたら、本からの引用部分は削っていく予定にしています。
別にウェブページを準備して、まとめあげるか、小さい冊子にするかは考え中です。
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図1.同志ベルンシュタイン
私が対処法を見つけた頃に出会ったのが、ベルンシュタインという人です。
方法は見つけたのですが、理論の基礎となるものが何が適当なのか、途方に暮れていました。
ちょうど実習で小児の施設に行くことになり、文献を集めていた時に「運動の自由度」という概念について書かれている文献がありました。
読んでいくと、「ああ、これだ」と分かったので、とりあえず原著の翻訳本を買い求めました。
本の名前は、『デクステリティ 巧みさとその発達』といいます。
この本は、いわくつきの本です。
ちょっと詳しく書いていきましょう。
ニコライ・アレクサンドロヴィッチ・.ベルンシュタイン/Nicholai Aleksandrovich Bernstein(英語読みは“バーンスタイン”)はソ連の科学者です。
1896年にモスクワで生まれ、1966年に亡くなりました。
『デクステリティ 巧みさとその発達』(以下『デクステリティ』)の日本語版序文の中にはこうあります。
「水泳やサイクリングの「秘訣」は、特殊な身体動作にあるのはなく、特殊な感覚作用と調整にある。この事実を知ればもう、運動の秘訣がなぜお手本で教えられないか(どんな動作でもお手本を見せることはできる)、なぜ一生のあいだ決して忘れることができないのか説明できるだろう。」
ある現象をコンパクトに記述する、ということはとても難しいものです。
「この人は正しい」と直観した私は、書店の本棚から買い物カゴに直行させました。
『デクステリティ』はベルンシュタインが一般の人向けに書き下ろした科学書です。
しかし、すぐには出版されませんでした。
“シュタイン”といえば、アインシュタインが有名ですが、ベルンシュタインもご多分に漏れずユダヤ人です。
ベルンシュタインは1947年に専門書『動作の構築』で、国家賞であるスターリン賞を取りました。
『デクステリティ』はこの頃に書かれ、校正を終えて最終印刷を待つばかりでした。
時代が時代なので、全体主義国家に生きるユダヤ人であるベルンシュタインは、立場が怪しくなってきます。
同時代の人に、犬のよだれと条件反射説でノーベル賞を取った、パブロフさんという人がいます。
このノーベル賞を取ったパブロフを真っ向から批判したベルンシュタインは、共産党から睨まれてソ連邦中央労働研究所バイオメカニクス班の室長の職を追われてしまいました。
ベルンシュタインのパブロフ批判が間違っていた、ということではなくて、国家の威信を傷つける、という理由です。
本当によいものが採用されない、というのはいつの時代にもあって、いわゆるコストの問題や敷居の高さ、政治といった要因です(例えばビデオのベータマックスとVHSの規格争いとか。
それでも机上で精力的に研究を続けていたベルンシュタインは、労働者や競技者の運動の自動化の過程に関する彼の初期の研究に基づいて、「自発行動の生理学〈physiology of initiative〉」を体系化しました。
しかし、この『デクステリティ』の原稿については沈黙していました。
本棚と天井の間にある隙間にあった遺稿が発見されたのは、死後20年もの歳月が過ぎてからのことでした。
時はゴルバチョフ政権によるペレストロイカ(改革)の只中。
『デクステリティ』はグラスノスチ(情報公開)の推進によって、1991年にナウカ書房より出版されました。
もしパブロフより先にベルンシュタインがノーベル賞を取れていたら、運動に関する研究は今ともっと違っていたのかもしれません。
さて、このブログでも『デクステリティ 巧みさとその発達』を教科書代わりに話を進めていきたいと思います。
分かりやすく書かれている本ですが、内容が大変深いために、上手く伝えられるかどうかは分かりません。
それでもやってみないことには話が進みません。
行きましょう。
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