ガウディのフニクラ
ヒトの身体を説明するために、色んなモデルが考え出されています。
大事なのは自分の求める動きにあったモデルを見つけることだと思います。
自分に合っていればそれでいいです。
なければ考え出しても構いません。
モデルはどこまでいってもモデルなので、人体そのものではありません。
自分がどうしたいのか、そのためには何が必要なのか、それだけです。
一流を極めた人たちのお話はとても面白いものです。
まったくジャンルの違う人たちの話でも、意外なところで共通項があったりします。
ベルンシュタインは「運動学習の父」とも呼ばれているみたいですね。
さて、マストを支持するモデルを提出しましたので、一流の建造物を手がけた人を紹介しましょう。
紹介するのはガウディという人です。
アントニ・ガウディは1852年に生まれ1926年に亡くなった、スペインの建築家です。
現在も作り続けられている、バルセロナのサグラダ・ファミリア聖堂はガウディの設計です。
ガウディの残した建築の形は、非常に独特で、何か生き物のような印象を与えます。
ガウディは独自の理論で、建物の構造を造り上げていきました。
その一つが、「ガウディのフニクラ」と呼ばれるものです。
フニクラ/Funícula
放物線を描く、アーチ形の構築物の耐久性は古くから知られていましたが、ガウディは独特の実験によって理想的な形を得ることに成功し、自らの建築に用いました。
糸の両端を固定して吊るすと、下向きのアーチができます。
アーチにかかる力、アーチ自体の材料の重さを計算し、糸をいくつかに等分してそれぞれの等分点におもりを下げます。
こうした実験を「逆さ吊り実験」とよび、この時にできる放物線、カテナリー曲線、双曲線などをガウディは「フニクラ」と称しました。
実際の設計段階で、この逆アーチを逆転すれば、理想とするアーチの形状が得られます。
糸の両端を固定して吊るした時にできる形を上下逆にすると、非常に安定した形が得られます。
この吊るした糸に構造に相当する荷重をかけ、それによって得られる糸の形を、ガウディはフニクラと呼びました。
この形が静力学的に安定するのは、次の理由によります。
吊るした糸は静止しているので、糸のどの点でも糸を伸ばそうとする力が働き、引き合う力の向きは逆であるが、力の大きさが等しいために吊り合っています。
これを上下逆にすると、吊るした時働いていた引き合う力は、押し合う力、つまり圧縮力に変わりますが、力の大きさは同じなので、やはり釣り合った状態になるからです。
このことは、1675年に「弾性の法則」で有名な、天文学者でもあるイギリスの物理学者ロバート・フックによって発表されました。
ガウディの建築に大きな影響を与えたヴィオレは、アーチの安定性について「われわれは、アーチの迫石(せりいし)が完全に安定した状態を保つためには、このアーチのフニクラの線が、アーチの内面(内輪)と外面(外輪)の間から絶対にはみ出してはならないことを知っている」としています。
(参考図書:『ガウディのフニクラ カタルーニャの曲線』INAX出版)
人体のフニクラ
ちょっと試しに作ってみましたが…とても再現できませんね(苦笑。
人体にはアーチ状になっている箇所が何箇所かあります。
骨や筋、靭帯という、素材として固さなどが違うものでできていますし、骨の形はとても複雑です。
骨の内部は骨梁という網目状の格子構造になっていて、軽くて丈夫な構造を実現しています。
骨梁が減ってしまうと、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)と呼ばれる、転倒して簡単に骨が折れてしまう状態になってしまいます。
この骨梁も、アーチ状になっています。
下肢だけを再現してみるなら、足部の母趾から踵(土踏まずのアーチ)と、小趾と踵の縦のアーチを2本づつ、そして二本の脚を1本の糸で、骨盤経由でやってみると雰囲気がでます。
自分の身体に糸を這わせて、糸を繋いでいくと、という感じなのですが、とても大変です。
いつかチャレンジしてみたいですね。
結び目をどうするのか、背骨や骨盤をどう再現すればいいのか、なかなか思いつきません。
骨をマスト、筋をロープとして考えてみましょう。
安定した姿勢を得るためには、ガウディの理論に従えば、逆さ吊りにした状態で筋にかかる力を、筋が発揮してくれれば安定します。
つまり、足首に近づくほど強く張る、ということになります。
足首まわりの筋肉ほど緊張しておかないと、姿勢は安定しない、ということになります。
それではこのブログの話は進みませんので、ここで筋を極力使わない方法を考えましょう。
人体には支持するための機構、つまり骨が備わっています。
骨はマストですね。
鉛筆を例にとります。
鉛筆を立ててみましょう。
ちょっと難しいかもしれませんが、立ちます。
鉛筆に筋肉は付いているでしょうか?
付いていませんね。
物理の世界では、ものの重心が支持面の中に落ちていると、立てることが可能です。
卵もその原則さえ守れば、縦に立てることができます。
でも人は動かなければなりません。
動くためにはどうするのかというと、重心を支持面から外せば勝手に倒れていきます。
重心を外すためには、やはり力を使いますが、高い位置ほど少しの力で倒すことができます。
この高い位置の力は、重心を調整するのにも有効に作用します。
片脚で支えつつ、倒れる先で体を支える必要があります。
動いても骨という支持機構で支え、重心を上手くコントロールして筋の出力を最小限に抑えることは可能です。
これはまた別の操作が必要になってきます。
それに言及するには、もうちょっと書き進める必要があります。
また、動きが入ると遠心力や慣性といった力を別に考える必要があります。
この記事のまとめ
◆吊るした糸は静止しているので、糸のどの点でも糸を伸ばそうとする力が働き、引き合う力の向きは逆であるが、力の大きさが等しいために吊り合っている。これを上下逆にすると、吊るした時働いていた引き合う力は、押し合う力、つまり圧縮力に変わるが、力の大きさは同じなので、やはり釣り合った状態になる。
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