ベルンシュタイン IV 動作の構築について(4)
豊かになる感覚的印象
脳運動系の新たな飛躍は、何より今まで接近できなかった新たなクラスの運動課題への鍵を獲得したことでした。これまで見てきたように、爬虫類は多くの種類の陸上歩行や飛行を習得しています。また鳥類は、驚くほど複雑で洗練された運動本能を獲得するに至り、哺乳類は驚くほどのペースで運動能力を向上させ続け、結果として複雑な狩りや、子育てや、原始的な建築などが可能になりました。これらはみな、一つ一つ段階を踏んで獲得されていった能力ですが、土台は共通しています。つまり、どれも感覚による調整、その中でも主に調整の基盤となる感覚知覚の向上と改善の上に成り立っています。新しいクラスの調整は、常に脳の新しい解剖学的階層が支えています。この新しいレベルの構造は一式の新しい動作および新しい協応を以前のものにつけ加えます。
この、綿密に織り合わさり、お互い密接に関係し合うすべての現象――新たなクラスの課題、新たなタイプの調整、新たな脳の階層、そしてそれらすべての結果としての新たな動作リスト――は、動作構築の新たな生理学的レベルと呼ばれています。
まず第一に、新たな感覚作用がどのような方向へ、どのようにして発達し向上するのかを理解することにしましょう。この感覚作用は、より高次でより複雑な構築のレベルに属する新たな感覚調整の基盤となります。残念ながら、動物、中でもとりわけ最下等に属する動物がどのような感覚をもっているのか、そしてそれが私たちの感覚とどのくらい似通っているのかということについて、私たちはがれらに直接尋ねる術をもたないため、この点に関する私たちの知識ははなはだ不十分で初期的な状態にあるといわざるを得ません。(間接的であり、かつ常に用いることができるとは限らない方法には、ロシアの著名な科学者であるI・P・パブロフー派による条件反射の方法があります)。
しかしながら、動作それ自体から感覚作用と印象の豊かさを知ることができます。動作の進化史上における新たな段階はそれぞれ、感覚器官の機能が向上する様子を鏡のように映し出しています。
これはさまざまな研究によって明らかにされたことですが、進化の梯子上で最も低い位置にいる動物は、知覚がより弱く、限定的で、鈍感です。いっぼう、脳が高度に発達している動物の感覚器官によってもたらされる知覚は、著しく精密で、正確で、明瞭です。たとえば、七歳か八歳になる子供の視力自体は決して大人にひけをとることはないにもかかわらず、字を読む際には一般的な大きさの活字では小さすぎるため大きな活字にする必要があるのはなぜなのか、考えてみるとよいです。
絵本の文字は大きいです。
子どもの脳が機能的に成熟するのは14、15歳だからだと思います。
文字が小さいと読めない、というより読まない、と解釈すればよいのでしょうか。
いつから私たちは小さな文字を読むようになったのでしょうか。
新聞を読み始めたのはいつからでしょうか。
むかしは私もテレビ欄しかみてない時代がありました。
次にみるようになったのはスポーツ欄です。
いまはどっちもみない時が多いですね。
そういえば小学校低学年の教科書の文字は大きかったですね。
第二に、高次の脳と低次の脳では、末梢の感覚器官から伝えられた情報を分類し処理する方法が大きく異なります。高度に発達した脳では、外的な印象をそのまま受け入れるわけではなく、それらを処理し、互いに関連させ、すばやくつき合わせ、熟練した方法で多くの情報をもたらす慎重な評価を行います。ベテランの医者が視力は弱っていても長いあいだ見過ごされてきた患者の病気を一目で診断できるのに対し、青年の医学生が若く鋭敏な目をもっていても一目では見抜けないのと同じです。確かに、感覚作用の得た印象の意味を見抜くことはまったく無意識的に行われ、ほとんど不随意的です。このことを意味する特別な言葉として直感という用語がありますが、名前をつけただけでは何も説明したことになりません。
この種の処理を経た後で、外界の知覚は確実に何かを失っています。つまり、知覚は新鮮さに欠け、直接的でなく、より図式的で、ときに偏りが生じることもあります。その一方で、知覚は処理によって、知覚された出来事の基本的な意味と本質を強調し、外界を詳細に認識することができます。
第三に、感覚知覚の発達具合は、調整すなわち運動の協応と最も密接に結びついた知覚の側面に最もよく反映されます。より発達した運動協応のレベルによる動作の制御は、特定の感覚器官から直接送られてきた生の直接的な印象が占める割合が少ないという特徴をもちます。直接的な印象は、異なる感覚器官からの感覚がそれぞれ見分けもつかないほどに融合した全体的な感覚のかたまりに置き換えられます。
高次の脳はどちらかというと、目に映るそのままではなくて、間接的で、本質を見抜くような知覚の仕方をいるようです。
そして、目は錯覚という言葉があるように、そのものを見る、ということから離れることもありえます。
最後に、高度に発達した脳による印象と知覚は、もう一つ興味深い特性を示しています。より能動的(アクティブ)であるという特性です。
印象を取り込む際の能動的な性質は、感覚器官が自らのもてるすべての能力や技を駆使しなければならないときに最も明確になります。
これはあまり知られていないことですが、人間の眼球運動は、人間よりも視力の良い動物の眼球運動より多様で、協応性についてもより洗練されています。感覚器官がより活動的になると、大昔からあった、横紋筋や感覚調整の出現する以前の原始的な機能が新しい形式で復活することになります。しかし、最新式の知覚では感覚調整との関係がずっと密接になっており、古い知覚とは形式がまったく異なります。ここに、感覚信号(感覚調整)が動作を改変し方向づけるいっぽうで、動作が感覚器官からの知覚を改変し、より深めるという、分かち難くきわめて複雑に絡みあった相互作用を見ることができます。
ちょっと書き抜いておきたいことは、「感覚器官がより活動的になると、大昔からあった、横紋筋や感覚調整の出現する以前の原始的な機能が新しい形式で復活することになる」です。
この記事のまとめ
◆ヒトは機能的にも脳が成熟しないと、精密で、正確で、明瞭な知覚とはならない。
◆感覚作用の得た印象の意味を見抜くことはまったく無意識的に行われる。
◆発達した運動協応のレベルによる動作の制御は、特定の感覚器官から直接送られてきた生の直接的な印象が占める割合が少ない。
◆高度に発達した脳では、外的な印象をそのまま受け入れない。
◆高次の脳の知覚は新鮮さに欠け、直接的でなく、より図式的で、ときに偏りが生じることもある一方で、知覚は処理によって、知覚された出来事の基本的な意味と本質を強調し、外界を詳細に認識することができる。
◆低次の脳の知覚である直接的な印象は、異なる感覚器官からの感覚がそれぞれ見分けもつかないほどに融合した全体的な感覚のかたまりに置き換えられる。
◆感覚器官がより活動的になると、大昔からあった、横紋筋や感覚調整の出現する以前の原始的な機能が新しい形式で復活することになる。
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