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ベルンシュタイン III 動作の起源について(7)

節足動物と脊椎動物はそれぞれの方法で横紋筋を使うことに成功しました。

ヒトが鎧や義肢装具などに、節足動物と同じ方法を導入したのも面白いと思います。

節足動物の解決法にも優れた面と弱点が存在していました。

袋小路の節足動物

 節足動物と脊椎動物の運動器官を比較してみると、単純さと正確さにかけては節足動物のほうに分がります。脊椎動物が明らかに勝っているのは、体が柔軟に動くという点だけのようです。もう一つの利点は、姿勢の平衡を保つのに筋を積極的に動員させる必要があるという点です。これを身体の静力学と呼びます。たとえば、昆虫の六本の脚はみな体節の胸部に付属しており、体は殼によって安定します。これにより、安定のためにことさら筋活動を必要としません。人間の身体はといえば、体肢が付属し、このうち二本が支え役となります。しかしこの場合、直立姿勢を保つためには、身体を支える筋を総動員して収縮させ続けなければならなりません。これらの筋は、ちょうど船のマストを支える横静策(シュラウド)のようなものです。このシステムを制御するのは非常に難しいように思えるが、実はこのシステムのおかげで人間(およびその他の脊椎動物)の身体は並外れた適応性と操作性を兼ね備えるに至ったのです。

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 軟体動物の利点すべてと、大きな力を伝えるのに適した硬いレバー構造とを結びつける難問を解決できた唯一の原理は、脊椎動物の基本原理でした。このような「軟らかくて硬い」システムを制御するほうがずっと大変なのはもちろんですが、これまでの各章でみてきたように、より自由度が大きく使いこなしがいのある道具はより制約が少なく、かえって持ち主に重宝されます。真の名人ならば、決して後悔することなく、運動を単純化するバイオリンのフレツトや自転車の袖前輪を息子から取り上げてしまうでしょう。

 重要なのは、節足動物が知的能力一般と知性に強く関連する動作の分野において脊椎動物にはるか遠く絶望的に及ばなかったことです。

節足動物が複数のレベルにわたる柔軟性の原理ではなく殼の原理を選んでからは、完全に一貫した道をたどることになりました。昆虫は進化の過程で複雑で正確な本能を獲得しました。この本能は、自分かちのもつ殼のように不変のものであった。また、進化は昆虫の原始的な日常生活のために、まるで線路のようにどこも似通っていて、単調で、よく適応していて、ずっと変わることのない行動を創りあげました。しかし同時に、個体レベルで適応したり、個々の生活経験を蓄積する道が永久に閉ざされてしまいました。昆虫は、本能と引きかえに、知性を進歩させる見込みを永遠に奪われてしまったのです。

ヒトが節足動物の解決法を利用する場合、正確さと単純さを求めると結果が得やすい、といえるでしょう。

脊椎動物の進化

 ネオキネティック動物の最も重要な特徴は、横紋筋、中枢神経系、および脳です。これらの特徴は、すでに高等軟体動物(たとえば、頭足綱の動物であるイカやタコなど)にいくぶんかは見られます。しかしながら、これらの特徴を十分に生かすことができたのは脊椎動物だけでした。

ネオキネティックとは、「新しい運動」を指していう用語です。この用語は、横紋筋、硬い複数リンクの骨格、爆発的な興奮プロセスを含めた新たな運動器全体を指して用いられます。

脊椎動物は、ネオキネティックという特徴を、勢いよく、そして止むことなく現在もなお続いている発達のための適切な条件の中に組み入れることができました。この発達については後に詳しく議論しますが、この結果、脳、とりわけ脳の最も新しい領野、いわゆる運動皮質ができあがりました。これにより、事実上すべての生理学的機能に対する支配権が確立されたのです。

 鳥類と哺乳類はともに、温血脊椎動物というグループを形成しています。温血動物というのは、より正確にいえば外界の気温から独立した一定の体温をもつ動物のことです。どんな化学反応でも、温度が上がるにつれて反応速度も上昇するので(ここでの議論との関係でとりわけ興味深いのは、神経と筋のプロセスです)、温血動物では冷血動物よりもずっとすばやくしかも活発に体内のプロセスが進行します。(この事実は、まもなく非常に役立つことになります。)

この記事のまとめ

◆脊椎動物は、軟体動物の利点すべてと、大きな力を伝えるのに適した硬いレバー構造とを結びつける難問を解決できた。

◆脊椎動物の重要な特徴は、横紋筋、中枢神経系、および脳である。

◆「軟らかくて硬い」システムを制御することで、人間(およびその他の脊椎動物)の身体は、並外れた適応性と操作性を兼ね備えることが可能になった。

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