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ベルンシュタイン III 動作の起源について(5)

さて、「横紋筋を上手く使えるよ」コンテストにエントリーした種族は、私たちが属する脊椎動物と、昆虫やカニやエビが属する節足動物でした。

結果から言うと、どちらも上手く使えたので引き分けになりました。

それでも私たち人類が脊椎動物から登場したのは、それだけ高度で優位な面が脊椎動物にはあった、ということになります。

生命は横紋筋に、ベストサポート競争を言い渡しました。一等は引き分けで、二つのプロジェクトが獲得しました。両プロジェクトとも一見したところ巧妙で適切な方法で問題を解決していましたが、両者のアプローチはまったく性質の異なるものでした。最初のプロジェクトは「節足動物」という見出しで提出され、二番目は「脊椎動物」と呼ばれました。どちらのプロジェクトにおいても横紋筋は予め与えられており、その横紋筋は可動部となる関節をもつしっかりとした骨組みに付着していました。両者ともほぼ競技のルールにはしたがっていました。

 節足動物プロジェクトには、ムカデ類、クモ類、甲殻類、およびすべての昆虫類が参加した。そのプロジェクトのアイデアとは、騎士が纏う鎧のようながっしりとした中空の殼を利用するというものでした。筋は、蝶番のついた殻の内側にあって、もういっぼうの節からもういっぼうへとまたがって付いており、内側から作用して殼を動かす仕組みになっていました。殼は全身を覆い尽くして(たとえばザリガニ)鎧の役目を果たしつつも、同時にレバーとして機能するよう巧妙に工夫されていました。さらに、この殻でできた外骨格は筋の力を借りることなく安定性の問題を解決しました。このことは、簡単な実験をしてみればすぐに分かります。エーテルかベンゼンに浸した脱脂綿を甲殻類か昆虫の頭のところに置いてみましょう。すると麻酔がかかります。ことによると死んでしまうかもしれないが、いずれにせよこれらの動物は安定を保ち続け、姿勢はずっと変わりません。対称的なのは脊柱動物が麻酔をかけられたときです。麻酔がかかったり死んでしまったりした脊柱動物は地面に崩れ落ちてしまいます。節足動物の筋は、このように、姿勢の維持など筋の二次的な義務からは完全に解放されていて、横紋筋の本業である能動的収縮のほうに専念していました。この目的は筋の微細な構造にもよく反映されており、そのため節足動物の筋は脊椎動物の筋よりもずっと単純です。

この節足動物のやり方は、外骨格系ともいいます。

今は人間の義肢装具にどちらかと言えば近いのではないか、と思います。

パワードスーツとか強化外骨格なんかがSFの世界ではありました。

問題はモーターとバッテリー、柔軟性、稼働時間、重さ、関節の自由度の制御などでしょうか。

この研究は、日本では筑波大学の山海嘉之教授や防衛省の自衛隊中央病院職能補導所(東京都世田谷区)で進んでいます。

米国では脳の信号を精巧な機械の義手に伝えて動かす、なんていう研究が進んでいるようです。

映画の『ターミネーター』みたいな世界ですね。

 いっぽう脊椎動物プロジェクトは、脊椎動物の骨格筋器官を使って節足動物とは違った方法、ほとんど正反対のやり方で問題を解決しました。硬い部品である骨は一本一本つながっていて、体幹や各体肢の真ん中に配置されています。筋は骨の外側に、動く必要のあるすべての方向に付着しています。ある方向に関節が動かせない場合(たとえば人間の肘関節は側方には動かせない)、筋組織では伸長しやすく柔軟性かありすぎるので、もっと丈夫な腱や靭帯にとって代わられます。いずれにせよ、関節はみな弾力性のある棒、つまり筋や靭帯であらゆる側から支えられています。このような支持システムは、船にそびえ立つマストや無線送信機のアンテナを支えるシステムに似ています。一見このような方法は、昆虫の採用した方法よりも不便でわかりにくそうに思えます。それにこの方法だと、筋は本業であるエンジンの働きに加えて支持の仕事(静的な仕事ともいう)も要求されます。しかしそのいっぽうで、受動的にも能動的にもはっきりと柔軟性が増す。ごつごつした鎧をもつザリガニと、先祖の軟体動物のように柔軟な魚やヘビとを比べてみるとよいです。厳しい生存競争にはじめて乗り込んでいった脊椎動物は、手足をもたない魚であったことを思い出しましょう。手足はあとから発達しました。出現当初の脊椎動物は、実質的に複数の骨からなる頭蓋骨と柔軟な胸廓を備えた脊椎だけで構成されていたのです。その脊椎は、柔軟に結合し合う多くの分節から構成されているので、さまざまな方向へ自由に曲げることができました。

このマストを中心に筋で吊り下げているような概念は、アレクサンダー・テクニークというリラクセーションの一つにも取り入れられています。

どちらが先なのかはちょっと分かりませんが、結構分かりやすい概念です。

ちなみにアレクサンダー・テクニークという方法は、ボディ・イメージの修正や頭部・首・背中などのリラックスに効果があるようです。

ボディ・イメージを解剖学的につかみたい人は、書店で手にとってみるとよいかもしれません。

Jp25

この記事のまとめ

◆横紋筋を発達させたのは、節足動物と脊椎動物である。

◆節足動物の構造は義肢装具に似ている。

◆脊椎動物の構造はマストをロープで引っ張る構造に似ている。

◆脊椎動物の構造は制御が難しいが、柔軟に結合しあう多くの分節から構成されているので、さまざまな方向へ自由に曲げることができる。

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