ベルンシュタイン II 運動の制御について(8)
筋-関節感覚とその補助
さて、ここまで私たちの身体は実は“動かない”のではなく、あまりにも“動きすぎる”構造を持っているため、そのコントロール(制御)が難しいことがだんだんとみえてきたと思います。
そして、自由に動いてしまうものをコントロールしていくためには、いつもそれが目的とする動作をしているかをモニター(監視)することで、きちんと動ける、ということをベルンシュタインは述べています。
そのモニターとしての感覚として、筋-関節感覚が一番重要です、というのが次のお話です。
筋-関節感覚は、ほとんどの運動を制御する上で肝心要の感覚です。この種の感覚をもつ器官はさまざまありますが、生理学的にはそれらを総称して自己受容器系と呼びます(自己受容感覚とは「それ自体の感覚」という意味で、自分の身体についての感覚をいう)。(注釈:また、固有感覚とも言います。なんで「固有」感覚というなんでしょうか。調べきれてません)。自己受容器の感覚終末は筋線維や、腱や、関節胞にまんべんなく分散しています。これらの末端(受容器と呼ばれる)は、身体各部の位置や、関節角度や、筋力などの情報を脳へと伝えます。
ちょっと伸びをしてみましょう。
「伸びてるー」という感覚が、皮膚や筋肉から伝わってくると思います。
それが自己受容感覚(固有感覚)です。
片側の肘を90°ほどまげてみましょう。
次に目を閉じて同じくらい曲げてみましょう。
この同じくらいに調整できるのは、自己受容感覚(固有感覚)が脳に「これくらい曲がっているよ」という情報を感じて伝えているからです。
自己受容器系を統括しているのは、空間内での頭の位置や動作を感じる器官である前庭器官、つまり側頭骨の奥深く(左右の内耳の中)にある耳の迷路です。この系からの信号はみな、空間での身体の位置および身体各部の位置と動作に関する情報を余すところなく脳へ伝えます。自己受容感覚は感覚調整を行う上で第一バイオリンの役割を担うことになります。
前庭器官には三半規管とよばれるセンサーがあります。
ちょうどx軸、y軸、z軸に対応しています。
前庭は頭の位置によって敏感に反応します。
転びそうになった時に頭の位置が急激に変わって、足が自然と出るのは、この前庭が働いているからです。
前に挙げた例は、自己受容器系が感覚を制御する唯一の系ではないことを示しています。どのタイプの感覚でも(おそらくは、口の中にひっそりと暮らしている味覚でさえ)、自己受容器と同じ役割を果たしえます。中枢神経系は、単に都合のよいほうの感覚を用いて決定を下すだけです。ある感覚器官が、そのときの動作に最も適した感覚調整のレパートリーをもっているとすれば、その器官が動員されて調整が行われます。このように、すべての種類の感覚はしばしば、(程度の差こそあれ)広い機能的な意味において自己受容器の役割を果たします。
運動の調整の中でもっとも直接的な感覚は筋-関節感覚ですが、それに次ぐのは視覚です。
外部情報の7割が視覚とも言われていますから、当然といえるでしょう。
視覚は人間の最も重要な感覚器です。視覚はきわめて多様な動作の制御に参加します。たとえば、多くの正確な手の動作や、労働にかかわる動作や、狙いを定めて投げる動作(たとえば的あて、射撃、サッカー、テニス)などです。
視覚によって、平衡感覚に障害が出ている人でもある程度代償できます。
代償とは同じ働きができなくても、補って他の働きで目的とすることができる、と捉えて下さい。
筋-関節感覚は内部の感覚ですね。
うちと外ではやはり違います。
ベルンシュタインが「水泳やサイクリングの「秘訣」は、特殊な身体動作にあるのはなく、特殊な感覚作用と調整にある。この事実を知ればもう、運動の秘訣がなぜお手本で教えられないか(どんな動作でもお手本を見せることはできる)、なぜ一生のあいだ決して忘れることができないのか説明できるだろう。」といった理由がみえてきたかもしれません。
外から同じような動きにみえても、中身では違う感覚で動いている=つまり、違う運動の調節がされているとするなら、運動の目的が違ってくる、ということになります。
ちなみに、姿勢の制御の情報は、
(1)下肢の圧受容体
(2)前庭系
(3)目
(4)首と脊椎の固有受容体
から送られてきます。主にここからの情報をもとにして、姿勢を調整するようにプログラムされている、といわれています。
特に固有受容器が多い部位は、足底部(足の裏)、頚部筋(首にある筋肉)、仙腸関節部(骨盤は3つの骨で構成されています。両側が腸骨、真ん中が仙骨です。仙骨の上に脊柱(腰椎)、下に尾骨があります)の3ヶ所とされています。
なんとなく重要なポイントが絞られてきましたね。
腰、目、足の裏、首。
大事でないカラダの部分なんてありませんが、こと姿勢に関してみると、このあたりに秘密がありそうです。
この記事のまとめ
◆運動する器官(運動器)で一番重要な感覚は、自己受容感覚(固有感覚)である。
◆運動器(筋-関節系)で固有感覚は唯一の感覚ではなく、視覚などの感覚がこれを補佐している。
◆固有感覚は内部の感覚である。
◆固有受容器が多いのは、足底部、頚部の筋肉、仙腸関節である。
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